がくしだったりマイクロだったりすぎもとだったりするひとのメモとか。

電車内で悪意無く子供の写真をとってくるおじいさんを制限できるか問題

先日こんなまとめを読みました。

togetter.com

年配の方に車内で子供の写真を撮られて不快だ消してくれと伝えたが、あやしくない大丈夫などという反応で話が通じなかった、というエピソードです。最初に読んだ感想は「なんだよこのじいさん、えらい迷惑行為だな。分かってない人が居るもんだ、ひどい」というようなものでした。しかし、コメント欄を読んでいくうちに、そうとばかりもいえないなと思い直すようになったので、ちょっとここに書いておきたいなと思いました。

まず前提として、これは刑法に反する犯罪行為で無い、ということをおさえておきます。「肖像権の侵害」という言葉があるので、ぼくもてっきり刑法で禁止されている不法行為かと思っていたんですが、実際「肖像権の侵害」とされているものは民事による不法行為になる「可能性がある」ものであるそうなのです。まとめのなかで、警察に訴えていますが、期待される行為をともなう反応を返してくれないことを指して話が通じないとしているものの、会話も出来ますしご老人に嫌がらせを意図している様子もないので、迷惑行為として警察が動けるかどうかと言うのは微妙なラインなんだろうなと思い直しました。

まとめのコメント欄やはてなブックマークで多く指摘されているように、かつて他人の写真を勝手に撮ったりする行為は、そこまで忌避されるような行動では無かったようです。ネットの発達で写真が容易に複製拡散され、コントロールできない形で広まることを考えなければならない時代になったので、クレームの内容はぼくには納得性があるものなのですが、このご老人はその前提を共有しておらず、それでこういった話の行き違いが生じています。となるとこの件「相手の行為をやめさせようとすることは、前提を共有しない相手に価値観を押しつける行為である」とも抽象化されます。

いやいや、嫌がってるんだからやめろよ、という意見もあるかと思います(コメント欄にもいくつか見えました)。しかし、われわれは、いやこれは主語が大きいな、ぼくは、にしておきましょうか、ぼくは「いやだからやめろ」とだけ言われてはいそうでうすね止めます、ということには慎重であるべきと思っています。「お前がそこに立ってるのは不愉快だ、電車を降りろ」っていわれて「不快に感じさせてすみません、降りますね」ってなりますかね。まあ、実際そんなことを言ってくる人は面倒くさいことになりそうなので、逃げるために電車降りるか。じゃあ、「肌の露出が多い女性のイラストが表紙になった本が書店にあるのが不愉快だから止めろ」ってのはどうでしょうか。「不愉快だって言ってるんだから止めろよ」ってならないですよね。

それとこれとはちがう、という話になるとは思うのですが、そうなんでしょうか。これはもう、だいたいの問題と同じように程度問題にしかならないのでは、と感じています。ぼくは「いまの時代は他人の写真をみだりに取ってはならない」という前提はわりと一般的ではあると「感じ」ますが、その前提が高齢者にまで完全に共有されているかというとそうでもなさそうな気もしています。相手の行動を制限するほど踏み込むなら、そこからすりあわせなければならないのではないか、というところでしょう。しかしながら、実際、電車の中でそこまで相手と対話が出来るかというと無理でしょうから、これは「もちろん相手の反応に期待してクレームは付けてもいいが、相手が拒否したり、とりあわなかったときにそれを強要できる裏付けは、残念ながらなさそう……」というのがぼくのなかでの現在の感想です。

Twitterなどで「お気持ち案件」などと揶揄されている行為を最近多く観るようになりました。先ほどの「露出が多いイラスト」例のように「自分が不愉快だからと行ってそれを止めさせようとする行為」を揶揄するもので、フェミニストを自称する方による表現を規制するような形での言及が多かったように感じています。ぼくは過度に相手をバカにするニュアンスを含む「お気持ち」という言葉はとても嫌いですが、言わんとする「あなたの気持ち一つで制限されたらかなわない」には共感するところはあります

ただこれにしてみても程度問題のひとつになりそうな気がします。おそらく「肌の露出が多い女性のイラストが表紙になった本」を不愉快だと言っている方は、それが「ある程度社会的にコンセンサスが取れる不愉快」だと感じているのではないでしょうかね。つまるところ程度の衝突であって、さっきの例と実は相似形なんじゃ無いかと思ったりするのです。もともとの例をあえて嫌な言葉で言い直せば「写真を撮られたくないというお気持ち」を、写真を撮る側はどこまで考慮すべきなのかということになります。

というわけでまだまだもやもやしている部分が周りにたくさんあるんですが、ぼくのなかで初見と感想が変わったことを記録しておきたかったので書きました。そんな感じです。

追記:イラストの例は対象に向かって突きつけられたわけで無く勝手に目にしたことに対するクレームなので、「特定個人に対する意図的な行為と不特定多数に対するターゲットを特定しない行為では話が異なる」という論点もあるかと思います。ぼくは結局は同じことになるんじゃないかと感じますが、これはうまく言語化できておりません。なお、この手の話が炎上しがちになるのは単純に一つのクレームだけの話でも無く周辺のいろいろな言動も含めてのことが多そうなので、誰かの肩を持つつもりも無いということは書いておきます。