がくしだったりマイクロだったりすぎもとだったりするひとのメモとか。

『伊勢志摩ミステリー案内 偽りの黒真珠』(ハッピーミール)

Switchのダウンロード販売で配信されているファミコン風のADVです。『オホーツクに消ゆ』が好きな小学生だったぼくにはこれは買わずには居られませんでした。クリアしましたので簡単に感想を。物語の筋について部分部分でけっこう踏み込んで言及しているのでまっさらな気持ちでやりたいひとはご注意ください。

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ファミコンクオリティーにこだわったとあるように、イラストは全編がドット絵、文字もあえてのドット文字です。ですが一部漢字を使ってしまっているので、ドットが完全に潰れた文字があってけっして読みやすくはないですね。最初は懐かしさもあってこのドット文字でやってましたが、さすがに読みにくさが気になってきたので、コンフィグでドットながら高さが二倍のフォントに変えられたため、そっちに替えてやってました。いちおうドット文字なのは変わらないので雰囲気をそこまで損ねることも無いでしょう。Swtichは携帯モードの方がむしろ読みやすいです。

よかったところ

ファミコンクォリティーにこだわりぬいた、とあるようにドット絵は大変あじわいがあってよいです。荒井清和さんももちろん最高です。映像だけでは無くギミック的にもこのこだわりの部分はたいへん楽しいです。本編と関係ないミニゲームが出来るとか、捜査そっちのけで名物を食べたり名所の紹介シーンが満載とか、謎の展開から突入するお色気シーンとか、突然の3Dダンジョンとか。いろんな過去作の懐かしさをちゃんと理解してつくってる感じがあってよかったですね。テキストの端々にあるくすぐりもよかった。

主題歌もご当地ミステリー風クオリティーで、昭和のサスペンス感のある歌詞もとっても良いですよね。

きになったところ

ただ、懐かしさだけではゲームとしては成立しないと思うんですが、シナリオがちょっとというかだいぶイマイチです。紹介動画には「不可解な事件」とありますが、素性不明の水死体はべつに不可解ではない気がします。口の中いっぱいに真珠が詰められてた、とかそういう異常な状況も無く、ただの水死体です。まあ、それは売り文句として筆が滑ったと思うことにしますが、全体的にテンポが良くない。捜査をしていると、相棒のケンがあっちにいけとかこっちにいけとか誘導してくるんですが、この誘導に理屈が感じられません。単に、ゲーム上、そこに行かないと物語が展開しないからシステムの都合であることが透けてしまってます。捜査がぶつ切れになりまくってるのも納得性が薄い。聞きたい人物に話を聞けない理由も「そういう雰囲気じゃなくなっちゃいました、出直しましょう」みたいな安易な理由を数回もちだしてきてて、殺人事件だぞ刑事さんよ。物語には、ご都合主義は欠かせないものですが、ご都合主義の展開であることを読み手に感じさせない工夫があわせて必要かとおもいます。

これについては、同情の余地というか理解できる点もあって、昔のゲームだと好き勝手にいろんなところに移動できてしまうために、コマンドを総当たりでやるにしても、漏れがあるといろんな場所でそれをやらなきゃいけなくなって、物語の進みが止まってしまいます(俗に言う「詰まった」というやつですね)こうなると中には飽きてしまう人も出てきますが、これが現代のゲーム環境に合ってないんじゃないかと思います。なので、ある程度サクサクすすめられるように、主人公たちの行き先を制限したり、相棒が誘導したりして調整が必要だったということでしょう。

ただファミコンクオリティーにこだわる、と謳ってお色気シーンとか3Dダンジョンまで取り入れたんならそこも思い切って不親切にして、ある程度ファミコンクオリティーと言い張りつつ、物語の力で読み手がどこに行くかをもっと考えさせるつくりにしてもよかったのではと思いました。

コマンドが全部選べる状態に無く、コンテキストによって勝手に制限されるのも同じような理由でしょう。そのわりには、同じ相手に同じ「話せ」を何度も選ばなくてはならなかったり、単に会話をどこで終えるかは作り手の裁量にすぎず、何度もそのコマンドを選ぶことの物語上の必然性もあまり感じられないのは残念でした(なお、コマンド順序によって会話がわりと簡単に矛盾しちゃうのは、まあこれについてはファミコンクオリティーならむしろそっちが正しい気もするので、しかたないかもしれません)

ストーリーもかなり強引で、最後のほうになってあっさり最初の事件の真相が割れちゃうし、バタバタと人が死んでいって強引に話を回収しに行ってるのが分かります。ひとがどんどん消去されてるので、犯人も透けちゃいますし、そもそもその犯人にしても伏線もあったもんじゃありません。最後になっていろいろシリアスなエピソードが出てきますが、説得力に欠けるので後出しじゃんけんでシリアスっぽいことを持ってきているだけのように見えちゃいました。そのわりにはこんな人死ぬし、凄惨すぎないですか。終わりの1時間の展開はただただ強引さが目立つ感じでした。イラストレータを荒井清和さんに頼むなら、シナリオについては予算的に難しいかもしれないけどプロの小説家でかつファミコン世代の方にお願いした方が良かったのではないですかね(追記:いろいろ見ると、どうやらテレビとかのサスペンスドラマを志向してストーリーはこのかたちになったようですね。だからってシナリオの評価を上げるわけにはいかないけれど、謎解きを中心には据えてなかったと言うことでしょうかね)

というわけで、本ゲームはシナリオには期待せず、懐かしさだけでやるかやらないかを決めたら良いかと思います。懐かしさだけでもやる価値はあるゲームかと思います。