がくしだったりマイクロだったりすぎもとだったりするひとのメモとか。

海猫沢めろん『キッズファイヤー・ドットコム』(講談社)

祝・熊日文学賞受賞。

ある日、トップ成績を誇るホスト、神威のマンションに放置された赤ん坊。あらゆるものごとを前向きに解決してきた神威は、この赤ん坊をひきとることに。IT会社の社長になったかつての同僚のもと、この赤ん坊をクラウドファンディングで育てようと決意します。当然のようにその行動は大炎上しますが……というのが前半。後半では少し視点が変わるのだけど、この構成を書いてしまうと興ざめなので、あたりさわりのないところで止めておく。

ホスト視点のところは、作者らしい疾走感というかドラッグめいた文章の積み上げが、ホストの世界をうまく表現していて楽しい。クラウドファンディングにまつわる部分で社会的な問題となったところを描いていくのですが、どう見ても荻上チキとおぼしき若手論客を登場させて、ひとつの極端な行動に肩入れすることもなく、わきおこる問題をひろいあげていってます。設定は奇をてらっているかのようですが、背景から問題がうまく導き出されている感じがある。

後半はもう少し、踏み込んでいるんですが、やはり何かに肩入れすることを巧妙に避けている感じがする。そこが良いという気もするのだけど、逆に何かとらえどころのないものを読まされたな、なにかもっと強烈なビジョンでねじ伏せられたかった、という不安も少しあります。なんかふわっとしすぎてる感じがあるんだよね。そんなことを感じるのは、この小説がSF的な構造を持っていて、見たこともない景色を見せてほしいという勝手な期待を感じてしまったからもしれません。

まあ、そんなところです。おめでとうございます。

キッズファイヤー・ドットコム

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