がくしだったりマイクロだったりすぎもとだったりするひとのメモとか。

『人狼作家』(原書房)

いちおう(元)ミステリクラスタ人狼GMクラスタ(なんだそれ)なので、けっこう前の本ですが今更読んでみました(2015年発売だとか)

何かミステリ的な趣向でもあるのかと思ったら、ネット人狼を現職作家にやらせただけの単なるリプレイでした。どの作家がどのキャラクターを担当しているのかをわからなくしているので、いちおう「だれをどの作家が演じているだろう?」というところも楽しめるような狙いはあるようですが、複数人の作家自身のファンじゃないとさすがにつらすぎるのでは。ぼくはかろうじて半分くらいは作家さん自体の顔まで思い浮かぶので、そういう楽しみ方もなくはなかったのですが、これ参加者の大部分のファンでもないとその楽しみを得るのは難しいんじゃないかと思いますトマト。

文章面でも、ログをそのまま垂れ流しているだけに見えますが、小説化にあたって読みやすくする工夫はなかったのでしょうか。神の視点が突然現れてなんか語り始めるため、その試みについては少しはやろうとしたようにも見えますが、結局思わせぶりなだけで、議論を整理してくれるわけでもなく、鋭いつっこみをするわけでもありません。ようするに、この神の視点はまったく面白さに寄与しておりません。そればかりか、そこになにかトリックみたいなものが仕掛けられてるんじゃないかと余計な気をまわしてしまい、むしろマイナスに思えます。

実際、人狼をやっている人たちになってみれば当事者なのでお互いの言っていることは理解できるんでしょうけど、第三者が、それもはじめてみた人物名であーだこーだやってるのを外から眺めさせられても、議論が一体どうなっているかを追うのはかなり難しいと思います。議論の楽しみを読者にも追体験してほしいなら、神の視点による議論の整理とか図示とか、もっとわかりやすくする工夫がないとつらすぎるんじゃないですかねぇ。

そもそも人狼ゲームの説明がほとんどないうえに、ネット人狼でやってるのがそのまま書かれてるので、プレイヤーがログアウトしていなくなっちゃうみたいなことが何の衒いもなく書かれていて、これは小説を読んでいるのかただのログを見ているのか、そこになにかトリックがあるのか、みたいなどうでもいいことに気を取られますが、いやいやそうだこれはログの垂れ流だったわ、と思い直した次第です。知らない人から見るとおそらくよくわからない部分が多いのではないかと思います。

逆に人狼を知っている人からすると、とりたてて劇的な展開だったわけでもないある一回のログを見せられても、「まあこういう展開ってあるよね」という感じでしか読めないわけです。それなりに面白くもあるがありがちでもある。たとえば対面人狼に参加すればものの数時間でこれと同じような議論は簡単に、しかも繰り返し体験できるレベルです。わざわざ小説形式で分かりにくいログを読む必要もない。繰り返しますが、作家のファンがそれと分かったうえで、感情移入して読めばそこにプラスアルファがあるでしょうけれど、前述のとおり登場人物をどの作家が担当しているかが伏せられているので、ファンにしてみてもよくわからない人物名がワーワーやってるのをひたすら見せられるわけです。うーん。

というわけで、これは冒頭に書いた通り作家のファン向けの、しかもある一人のファンではなく、複数の作家さん本人のキャラクター性を理解している人むけの(もしくは作家仲間が楽しむ用の)よくわからないファンブックの一つ、とったところでしょう。非常に残念ですが、いまさらこれを手に取るもの好きも僕くらいのものかもしれませんね。

人狼作家

人狼作家