がくしだったりマイクロだったりすぎもとだったりするひとのメモとか。

クリスチアナ・ブランド『領主館の花嫁たち』(東京創元社)

領主館の花嫁たち

領主館の花嫁たち

気が触れて死んでいったとされる領主ヒルボーン家の妻。悲しみに暮れる館に、顔にひどい傷を負ったひとりの女性家庭教師テティがやってくる。館の幼い双子たちはすぐに彼女に懐き、館の主人も彼女を快く受け入れるが、これまで館に君臨していた叔母は面白くない。領地の管理人のジェームズ・ヒルは何かを予感していた。ヒルボーン一族にかけられた呪いは、領主が死に、やがて娘たちが花嫁となろうとするにつれ、次第にその力を表してくる……。

クリスチアナ・ブランド、海外ミステリで好きな作家を挙げろと言われれば、ためらいなくブランドと答える程度には好きな作家です。ちょっと頭のおかしい(としかおもえない)人たちが右往左往するミステリを愛しております。そのブランドが晩年にものした本作は、ミステリではありません。

これはまごうかたなきゴシック小説です!(ですよね?)そして、たいへん面白い。

しかし、ブランド印です。ただただ重厚なお屋敷の顛末を書いているわけではありません。第1部は地ならし。ぼくのイメージするゴシック小説の「退屈さ」までちゃんと書かれているものですから、ちょっと読むのに時間かかりました。しかし、このやや間延びしているとも思えそうな助走は第二部のために必要なのです。

第二部でちょっとしたプロットの捻りを入れています。展開を割らないようにボカして書きますが、ひとつは、とある人物の出生に纏わるエピソード、もうひとつは、半ば共犯関係に陥った登場人物が思いつく大がかりな欺瞞、です。ここが、ミステリ作家の手つきだなあ、と思わせるんですよね。このプロットも、そして、ゴシック小説としての細々としたギミックも、登場人物の心のねじくれた暗さみたいなところと実にうまくマッチしています。

この作品に出てくる女性は実にいやらしく、それがまた人間らしい。男性はジェームズ・ヒルがかろうじて、といったところでそれ以外はことごとくバカで、ほとんどステレオタイプと言ってもいいほどに貶められています。いや、これは男が、というより、館の外界を対比的に描いたらそうなった、ということなのかも知れません。いずれにせよ馬鹿な男たちに代表される外界が脳天気な色で塗りつぶされればされるほど、憎悪渦巻く館の色合いが際立つようです。

さすがブランドです。たいへん楽しませてもらいました。